仮面男子、夏生くん

「何なんだよ、お前！　今日もヘラヘラ笑いやがって。気持ち悪いんだよ！」

　――なのに、これは何だ。どうして平井さんが数人の女子に囲まれてるんだ。

　放課後、図書室や移動教室などでしか使われない教室のある特別棟で聞こえた声に気付いて見に行ってみると、平井さんが壁際に追い込まれて数人の女子に罵倒されている現場に出くわす。

　しかもあの女子達は、同じクラスの、平井さんと同じようにいつも俺の話を笑って聞いてくれてた子達だ。

　どうしたらいいんだろう。いじめられたことはあっても、いじめられてる人は見たことがなかったから、こういうときどうしていいのか分からない。いつもみたいにふざけて仲裁に入ればいいのか、それとも誰か先生に注意してもらうように頼めばいいのかと、仮面の上から頭を抱える。