0人が本棚に入れています
本棚に追加
「いたっ! やめて!」
「――!」
俯いて悩んでいたときに耳に届いた声は、自分の好きな人の声で。バッと顔を上げたとき、彼女は正面にいた矢田さんに髪を引っ張られて泣いているところだった。
力いっぱい引っ張られているのか、今にも髪が抜けてしまうんじゃないかと思ってしまうくらいに平井さんの髪が横に引っ張られて、それに必死に抵抗している平井さんの姿を見て、気が付けば、身体が勝手に動いていた。
「やめろ! その手を離せ!」
もう無我夢中で、そう仮面を投げ捨てて平井さん達のいる場所まで駆け寄り、髪を掴む矢田さんの手を掴み上げる。
「なっ! 何だよ、あんた!」
すると突然現れた俺に自分の醜態を見られたと、矢田さんはカッと顔を赤くして逃げ去っていき、横にいた他の数人は慌ててそれを追いかけていった。
最初のコメントを投稿しよう!