仮面男子、夏生くん

　それは、都合よく解釈しても、いいのかな？

　だってそんなの、俺のことを言っているようにしか聞こえないじゃないか。

「顔も知らないのに好きになっちゃった私でも、いいですか？」

　顔を上げてそう照れ臭そうに笑う平井さんの笑顔も言葉も、全てが嬉しくて、俺はつい自分から平井さんの手を両手でぎゅっと握る。

「俺の方こそ、ずっと顔隠してた奴でいいんですか？　多分これからもしばらくは仮面は外せないし、二人でどこかに行くときだって……」

　こんな、我慢ばかりさせてしまうような男を、普通は選ばない。だからこそ不安になって逆に訊き返してしまう。

　だけど平井さんは、まるでそんな俺の馬鹿みたいな不安も全て分かってるみたいに、穏やかに笑っていた。