仮面男子、夏生くん

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「さっき廊下で俺の前を校長が歩いててね。今日は暑かったからうちわを持ってたんだけど、そのままこーっそりバレないように後ろから校長をうちわで(あお)いでみたわけ。そしたらスルーンッて髪がずれたんだよ! 今まで校長がヅラだなんて誰も疑わなかったのにどうやったらそんな自然に隠せるんだろうって思ったよ」  教室の真ん中で机の上に座ってそう身振り手振りを交えて話せば、周りに集まっていたクラスメイト達は大爆笑。離れた席に座ってこちらの話に耳を傾けていた人も、くすくす笑っている。  そんな表情を見て、俺は仮面の下でひっそりと安堵の息を漏らす。 「ちなみにその(あと)、校長は自分の頭の変化に気付かずにそのまま職員室に入ってったよ」 「他の先生達も気まずかっただろうなー」  俺が一言付け足すとまたクラスは笑いに包まれる。
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