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「昼休み終わりだぞー、そろそろ席着けー」
「あ、先生来たっ」
「じゃあ、また後でな! “夏生”」
「うん」
クラスメイトがそう言って各々の席に戻っていくのを確認すると、また仮面の下を安堵の息で満たす。
正直、校長のヅラだとか他の先生の気まずさだとか、そんなことはどうでもいい。俺はクラスに馴染めていれば、それでいいんだ。
始まった古典の授業で誰かが朗読する声を聞きながら、俺は右隣りの列、二つ前の席に座って教科書を開いて読まれている箇所を目で追っている女の子、平井さんをちらりと見る。まあ、盗み見なくてもこの仮面のおかげで俺の視線の先なんて誰も気付かないだろうけど。
平井さんはこの高校に入って初めて隣の席になった女の子。二学期になって少し離れてしまったけれど、それでもこうして目で追える距離にいれることが出来て、日々喜びを感じている。
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