仮面男子、夏生くん

　俺は小学生のとき、いじめられていた。

　原因は俺の顔。どうやら俺の顔は俗に言う中性的な顔立ちらしく、小学生からすれば男なのに綺麗な顔立ちをしていたらおかしな奴という印象になるのだろう。

　当時、クラスのリーダー的存在だった強気な男の子、そしてその友人二人から、『夏生って女みたいな顔だから本当は女なんじゃないか？　本当に男なのか？』と、無理矢理パンツごとズボンを下ろされたことがあり、担任のいない放課後、クラスメイトが大勢いる中での出来事に、俺は真っ赤になって下着とズボンを押さえて泣きながら帰ったことを、嫌というほどよく覚えている。

　顔を見せたらまたいじめられるかもという恐怖から、中学に入ったのをきっかけに仮面をつけて生活するようになったんだけど、どういうわけか仮面をつけていると、元々恥ずかしがり屋な性格なのに変に強気になって、さっきみたいに人前でふざけたりも出来るようになった。

　日常生活の中で仮面をつけて生活している奴なんて、それこそおかしな奴なのに、これが俺の常(つね)だと分かると、周囲もそれほどからかったりしてこなくなって、今では何故か俺の周りに人が集まってくるほど。