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『その子、夏生くんが怖いんじゃなくて、夏生くんの仮面が怖いんだよ』
『……へ?』
口元に軽く握った手を当てて、くすくすと堪えるように笑っていた彼女の言葉に、まるで時が止まったかのように時間が感じられなくなって、思い出したかのように遅れてはっとした。
そっと、仮面に触れる。
そうだ。よくよく考えれば分かるじゃないか。俺は常日頃この仮面をつけている。だからいくら犬を安心させるために笑っていたところで、仮面をしていたんじゃそんなもの見えやしないし、余計に警戒されるだけ。当たり前じゃないか。
『……っ』
俺は仮面に隠れて、自分の馬鹿さに顔を熱くさせる。ほんとによかった、仮面があって。
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