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俺が人知れず恥ずかしさに悶えていると、隣に平井さんが近付いてくる。彼女はそのまま俺の手からタオルを取り、犬を抱き上げて拭いていく。
『大丈夫だよー、この人怖くないからねー』
『……』
その流れるような自然な行動に、目が釘付けになった。俺が出来なかったことを、あっさりやってしまう平井さんの姿が、眩しく映る。
『夏生くんってちょっと近寄りがたいと思ってたけど、優しい人なんだね』
犬を抱いたまま、なんてことないように笑顔で俺にそう言って、すぐにまた犬に向き直る平井さん。その姿に、本当になんとなく、思ったことをそのまま口にしただけなんだろうな、と思う。
なんて優しい表情で笑うんだろう。
平井さんの笑顔に、心が初めての感情に震えた気がした。
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