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1.魔族
お嬢様の体が半分なかった。
お屋敷に仕えている自動人形ソレイユ--私が町の買出しから戻ってくると、お屋敷が半壊していた。
そして、お嬢様は瓦礫の中で亡骸となっていた。
下半身が引きちぎられたのかどこかに消え、悲哀を浮かべて涙を流す跡があった。
私は目の前の現実が受け入れ難かった。
私にとってお嬢様が全てであり、私が存在する理由であった。
そのお嬢様がいなくなってしまっては、私は何も出来ずこの場で朽ちてしまう。
お嬢様のそばに落ちてある花弁を手に取った。
(これはお屋敷で咲いている花の花弁ではない。一体なぜ?)
「それは弔花の魔女ポーラのものだ」
不意の声に瞬時に、身構える。
魔族…?
「何故魔族がここにいる?」
「君に手助けをしてやろうと思ってね。屋敷が壊され主人が殺されさぞ無念だろう。その花弁は間違いなくポーラのものだ。復讐を希望するなら私がポーラのところまで案内してやろう」
復讐……お嬢様がこんなお姿にされて何もしなくてもいいのだろうか?
お嬢様はあるいは復讐を望まないのかもしれない。
だが、私はどうしても許すことはできそうになかった。
お嬢様を奪われこの場でただ朽ち果てるなどあまりにも虚しすぎる。
この魔族が信用に足るかどうかはあやしかったが、今ポーラに会うための手がかりはこの魔族しか持っていなかった。
「わかった。私をポーラのところまで案内して」
私は向かうーーお嬢様の復讐の相手へと。
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