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「あれ、長谷川君?」
丸まった背中に掛けられた声。
振り返った先にはセーラー服にカーディガンを羽織った少女が一人。
「あ、やっぱりそうだ!体調悪いの?大丈夫?」
「う、うん。ずっと寝てて。病院行ったけどただの風邪だって。薬も貰ったし、明日には行けるから」
少女、瀬名馨は迷ったような笑みを溢す。
「…長谷川君。明日は学校お休みだよ」
「…ああ、そ、そうだね。やっぱりまだ駄目かもしれない」
砂漠をさ迷ったらこんな感じなのだろうか。
一音毎に水分が奪われて、喉がみるみる渇いていく。
言葉が縺れてうまく出てきてくれやしない。
「とにかく、無理しちゃ駄目だよ。ゆっくり休んでね」
「また月曜日に、待ってるから!」
今度は綻びのない笑みだった。
彼女はじゃあねと手を振ると、僕を追い越し先を行く。
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