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放課後、嶺亜と陸は走って病院に向かった。二人は何も話さず、ただ一心不乱に走り続けた。病院に着いて、二人は受付の人に病室を教えてもらい、急いで病室に向かった。病室に着いて、嶺亜が2、3回ノックする。
「失礼します。」
中に入ると、年配の男女が3人とベッドに横たわっている要がいた。要は二人の存在に気づくと、ゆっくり状態を起こした。
「嶺亜…陸…。」
「先生、大丈夫!?」
二人は慌てて要の元に寄った。
「大丈夫。急に倒れて悪かった…。」
「そんなのいいよ!気にしてない!無事でよかった…。」
嶺亜がホッと胸を撫で下ろすと、要が嶺亜を抱きしめた。
「心配かけさせたな…。本当にごめん。今朝から息苦しくて……」
「…そう、だったんですか。気づいてあげられなくて、ごめんなさい。」
「いいんだよ。そんな簡単に気づけるものじゃないし…。」
嶺亜はゆっくり要から離れて、要の目を見る。その目はとても真剣だった。
「…先生。倒れた原因は何だったんですか?」
嶺亜がそう尋ねると、要は少し微笑み…けどどこか悲しそうな顔を浮かべ、ゆっくりと口を開く。
「……肺がん…だって。」
「…えっ…!?」
二人の表情が一気に暗くなる。だが、陸は慌てて要に尋ねる。
「で、でもっ!手術したら治るんですよね!?」
陸の言葉に、要は少し落ち込みながらも微笑んで言った。
「無理だよ。」
「…え?」
「もう、手術するのは難しいって言われた。なんか…胸膜炎起こしているし、他の臓器にも…もう転移してるみたい。」
要の言葉を聞いて、二人は言葉を失う。要は続ける。
「お前達の卒業式まで、生きられるかどうか分かんない。」
そう言った直後、陸が尋ねる。
「余命宣告…されたんですか?」
「あぁ。持ってあと3ヶ月だって。」
その言葉で、嶺亜と陸はまたも言葉を失った。本当に末期の状態だった。二人が深刻な顔でいるのを見て、要はいつものように笑って二人に声をかける。
「そんな顔すんなよ!大丈夫。お前らの卒業式と合格発表までは頑張るからさ!」
「……」
嶺亜はさっきからずっと下を向いている。その様子を察した陸は、要に言う。
「先生、もう遅いので帰ります。お大事にしてください。」
「もうそんな時間か。悪いな、遅くまで。勉強頑張れよ!」
陸は俯いたままの嶺亜を、連れて病室を後にした。要はずっと笑顔のまま、見送っていた。
病院からの帰り道、二人はしばらく無言のまま帰っていた。そして、嶺亜と要の住むマンションの前まで来た時、ふと嶺亜は足を止めた。陸は突然止まった嶺亜に気づいて振り向く。
「…嶺亜?どうした?」
陸が尋ねると、嶺亜は顔を上げた。
「……陸。俺、また一人ぼっちになるのかな?せっかく…大好きな人と出会えて、ずっと一緒にいられるって…思ってたのに…。また一人ぼっちになっちゃうのかな…?」
嶺亜の目から大粒の涙がボロボロと零れ落ちる。陸は何も言えず、ただただ嶺亜の背中をさするだけしか出来なかった。
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