120人が本棚に入れています
本棚に追加
時間はあっという間に過ぎていき、冬休みが終わり、受検まで残り1日となった。陸と嶺亜は、要のことを気にしながらも必死に勉強した。冬休みが終わってから、二人は要のところに行くことがなくなっていた。今日も陸と嶺亜は、図書館で最後の勉強をしていた。二人は一言も喋らずに、自分の勉強をしていた。そして、18時。図書館が閉まる時間になり、二人は図書館を後にした。帰宅途中に、嶺亜がふと口を開く。
「陸、先生のところにお見舞い行っていい?」
急なことに、陸は驚いた。けど、すぐに嶺亜の気持ちに気づいて口を開く。
「いいよ。それなら俺、先に帰るよ。二人で話したいことあるだろうしね。」
「……陸。」
「面会時間無くなるから、早めに行きな!じゃあ、また明日!」
陸は嶺亜に背を向けて、帰路についた。嶺亜は、陸の後ろ姿が見えなくなるまで見送った。
「失礼します。」
嶺亜は数回ドアをノックし、病室に入る。中には要が1人だけで本を読んでいた。
「嶺亜…?どうしたんだ、こんな時間に?」
「先生の顔を見に来ました。」
嶺亜がそう言うと、要はふっと笑みを浮かべた。
「そっか…。よく来たな。あんまり時間ないけど、そこ座れよ。」
「…うん。」
嶺亜は、近くにあった椅子に腰をかける。二人きりで、嶺亜は少し緊張する。
「…いよいよ、明日だな。試験。」
「…そう…ですね……。」
二つの緊張が混じり、嶺亜の手が震える。勉強は沢山した。けれども、受かる自信がしない。そんな思いを心に秘めていると、要が声をかけた。
「嶺亜、ちょっとこっち来て。」
要は手招きをする。不思議に思った嶺亜は椅子から立ち上がり、要の側に行く。すると、要は嶺亜の腕をとって引っ張る。
「わっ…!?」
突然のことに、嶺亜は体制を崩し、要の体に引き寄せられる。そして、要の細い腕で抱きしめられる。
「……先生?」
嶺亜は要の方を見やる。要は優しい笑みを浮かべながら嶺亜を見て、そして口を開く。
「お前なら大丈夫だよ。今まで頑張ってきたの、知ってるんだから。明日は自分の実力を思いっきりぶつけてこい!俺は、お前らが試験に受かることを願っている。応援しているからな。」
「……はい。ありがとうございます。」
不思議と要の言葉に、嶺亜は緊張が一気に解けた。その日は、面会時間ギリギリまで一緒に過ごした。
最初のコメントを投稿しよう!