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そして試験当日。嶺亜と陸は、朝早くに要の顔を見てから試験会場に向かった。
「やべぇ…緊張してきた……」
試験会場に向かう途中、陸の顔が珍しく青ざめていた。手も少し震えている。落ちるかもしれない不安でいっぱいになっていた。そんな陸を見て、嶺亜は陸の手を握る。
「…嶺亜?」
「大丈夫だよ。今日まで頑張ってきたんだから。だから、受かろう。二人で。それで、先生に報告するの。」
嶺亜はニコッと笑ってそう言う。そんな嶺亜を見て、陸は笑みを浮かべた。
「あぁ、そうだな。ありがとう、嶺亜。」
こうして、二人は試験会場に着き、試験を受けた。
「やっと終わったぁぁ!」
二日間の入学試験が終わった次の日、クラスメイト達が受検から解放されて、いつもより賑やかになっていた。陸と嶺亜もまた、二人で会話をしていた。
「嶺亜、テストどうだった?」
「難しかった。受かるかどうか…」
「おいおい。二人で受かるんだろ?お前が言ったことだろ。」
そんな他愛もない会話をする。もう少しで卒業。義務教育を終える。当然だが、全員バラバラになる。あっという間の中学校生活だったなと、嶺亜が思っていると教室のドアが開いた。そして、嶺亜は一瞬息を飲んだ。
「おはよう、みんな。そして、入試お疲れ様。ホームルーム始めるぞ。」
教卓の前にいたのは、入院しているはずの要だった。事情を聞いていたクラスのみんなも、驚いて要に詰め寄る。
「先生!?退院出来たの!?」
「もしかして治ったの!?」
「卒業式出れるの!?」
クラスメイト達が、お構い無しに質問攻めをする。彼らのテンションに、要は苦笑いしながら口を開く。
「そんな一気に喋るな。俺は聖徳太子じゃないんだぞ?ほら、一旦席つけ。」
要の言葉に、クラスメイト達はそれぞれの席に着いた。生徒達が席に着いたことを確認すると、要は小さく咳払いをして話し始める。
「えーっとな…まず、俺の病気のことなんだが、治ってはいないんだ。」
「治っていない」その一言で、クラスは一気にしーんと静寂になった。要は続ける。
「実は、病院の先生に無理言って外出許可を得たんだ。本当はこんなことよくないんだけどな。それでも、お前達の最後の学校生活だけは見届けたくて。卒業式まで、いつも通り学校に来れることになった。」
クラスメイト達はその言葉に、笑顔を見せた。卒業式まで。期間は短いが、それでも担任が卒業式に出てこれることが何より嬉しかった。しかし、嶺亜の顔は浮かない顔だった。それはまた、陸も同じだった。二人は学校終わりに、校門で要を待ち続けた。そして夜、要が二人の存在に気づき一緒に下校することになった。
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