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「…どうしてこんな時間までいたの?」
要は分かってはいたが、二人に質問する。二人は黙ったまま、一言も喋らなかった。何も喋らない二人を見ながら、要ははぁ…とため息をついて、頭をポリポリとかく。
「…あのな、こんな時間まで俺を待ってたら風邪ひくぞ?3月といっても、まだ寒いんだから。」
「……」
そう注意しても、二人は無言のままだった。何も喋らない二人に、要は痺れを切らして大きな声を出した。
「お前ら、ちゃんと聞いてるのか!?いい加減何か話し……」
そう言いかけた時、嶺亜の顔を見た要は驚いた。泣いていた。
「…うっ…うぅっ……」
「れ、嶺亜……?」
驚きながら声をかけると、嶺亜は泣きながら話し始めた。
「先生…病気…治ってないのに、何で…何でっ……!」
その言葉に、要は理解した。二人が何で元気がなかったのか。どうして何も喋ろうとしないのか。要は嶺亜を抱きしめた。
「……う…ぐすっ……」
「ごめんな…俺のこと心配してくれたんだよな。ありがとう。俺なら大丈夫だから。」
嶺亜は号泣した。その様子を見ていた、陸は二人から視線を外し、目元を少し拭った。
「陸。」
突然、自分の名前を呼ばれて陸はビクッとする。要の方をゆっくりと見ると、要は手招きをしていた。
「一人で我慢なんてしなくていいんだよ。ほら、おいで。」
「……っ!」
陸は最初は戸惑い、泣くのを堪えていたが、だんだんと涙が溢れて小さい子供のように号泣した。
「ぅあ…あぁぁっ……」
「二人とも…ありがとうな。俺は二人と出会えて凄く幸せだよ。」
その日は、月がとても綺麗な夜だった。
そして、3月10日。卒業式の日になった。学校では、在校生が卒業生に胸花をつけたり、先生達が会場の設営をしたりと、賑やかだった。陸と嶺亜は、在校生から胸花をつけてもらい、教室に向かった。教室には、早く来た生徒が何人かいた。そして、教室は在校生が飾った飾りで華やかになっていた。
「…俺達、卒業しちゃうんだな。」
突然、陸がそんなことを呟く。どこか悲しい雰囲気の笑みを浮かべている。嶺亜は口を開く。
「そうだな…。」
「…先生とも…お別れ、なのか……。」
「……っ!」
その言葉に、嶺亜はビクッとする。今まで自分を支えてくれた先生とお別れ。そう思っただけで、胸が苦しくなった。
「……学校では、お別れ…だけど、まだ先生は生きてる。まだ、俺は一緒にいたい…。」
嶺亜の言葉に、陸は視線をそらしながら言った。
「そう…だな……。ごめん、余計なこと言って…」
「大丈夫。」
そんなことを話していると、クラスの女子が二人に話しかけに来た。
「神谷君、黒澤君。みんなと一緒に写真撮ろ!」
「…写真?」
「うん、最後なんだから記念に!」
二人は顔を見合わせる。そして、ふっと笑い笑みを浮かべながら、口を開く。
「そうだね、撮ろうか。」
二人は彼女に連れていかれ、写真を撮った。
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