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しばらくすると、クラスメイト全員が教室に集まっていて、要の姿も見えた。女子生徒と少し話したところで、要は教卓の前に立って口を開いた。
「お前ら、席につけ~。」
その一声で、全員が席に着いて静かになる。そんな彼らを見て、要はふっと笑う。
「…別に、静かになる必要ないんだけど。」
要が笑いを抑えながら話すと、ムードメーカーの男子生徒が、「先生が、席につけって言うからですよ~!」と言う。要もいつものノリで、
「静かにしろなんて言ってないけど~?」
と言った。クラスメイト達はそんな彼らを見て、笑い合う。卒業式前に、クラスの雰囲気が凄く温かくなった。と同時に、寂しさも増した。
今日…俺達は、卒業する。
そんなことを思っていると、あっという間に式の時間になり、卒業生は体育館前に集まった。中では、もう来賓の方や、両親、在校生が待っていた。そして…
「卒業生が、入場します。拍手でお迎えください。」
その声と同時に体育館前のドアが開く。1組の生徒から入場する。嶺亜達は2組で、クラスは2組までだった。1組の入場が終わり、2組の入場になる。先生が入場する。それに続いて、2組の生徒も入場する。陸も嶺亜も入場し、2組の最後の生徒も入場した。自分の椅子の前につくと、入場曲を演奏していた吹奏楽部の演奏が止み、先生の合図とともに卒業生は椅子に座った。式はどんどん進んでいく。
「卒業証書授与。」
そしてついに、卒業証書授与の時。1組の生徒から、名前が呼ばれていく。陸と嶺亜の2組は、まだ後の方だった。だが、すぐに1組の卒業証書授与は終わり、2組の番になった。
「3年2組、安藤菜々子。」
要が2組最初の生徒の名前を読み上げる。呼ばれた子は、「はい。」と返事をして壇上に上がる。不思議なものだ。自分達の卒業式がこんなにも早く感じるなんて。そんなことを思いながら、嶺亜は練習でしたように自分の席を立ち上がった。そして、ついに自分の名前が呼ばれる。
「黒澤嶺亜。」
「…はい。」
2組の担任、要が嶺亜の名前を呼ぶ。嶺亜は、壇上に上がって校長から卒業証書を受け取った。そのまま壇上から下りて席に着いた。そして、2組の卒業証書授与もあっという間に終わった。
「以上、卒業生。71名。」
要はそう言うと、礼をして席に着いた。式は順調に進んで行った。在校生の代表挨拶、合唱が終わった後、すぐに卒業生代表挨拶が来た。
「卒業生代表、黒澤嶺亜。」
「はい。」
嶺亜は席を立って壇上に上がった。
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