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壇上に上がった嶺亜。マイクの前に立って口を開く。緊張しながら、嶺亜は答辞を読んだ。途中で、嶺亜は要と目が合った。にっこり笑いながら見ている。涙が溢れそうになるのを堪える。
ダメだ、ここで泣いたら…ダメだ。
そう自分に言い聞かせながら、嶺亜は答辞を読み終えた。その後、すぐに卒業生の合唱。あっという間に卒業式が終わった。
「卒業生、退場。」
そして、あっという間に退場。9年間の義務教育が…終わった。1組から退場していく。続いて2組も退場。要を先頭に、2組も次々と退場していく。ほとんどの女子が泣きながら退場していく。俺は泣かない。泣く訳にはいかない。嶺亜はそう思いながら順番を待っていた。退場の順番は1番最後だった。次々とクラスメイトが退場していき、嶺亜も歩き始めた。在校生の間を抜け、吹奏楽部の隣を通り、体育館を後にした。卒業…したんだ。そう思いながら、教室に戻ろうとした時だった。
「嶺亜。」
聞き覚えのある声に、今まで俯いていた嶺亜は顔を上げた。そこには、要の姿があった。
「…先生。」
「卒業おめでとう、嶺亜。答辞良かったよ。お疲れ様。」
そう言いながら、要は嶺亜を抱きしめた。
「……っ!」
泣くのを堪えていた嶺亜の目は、熱くなっていった。そして、溢れ出す。
沢山の思い出が詰まった学び舎
沢山の友人
別れは悲しかった。
でも、1番に辛かったのは…お世話になった大好きな先生でもあり、恋人との学校での別れだった。
俺はあの日、先生の胸の中で号泣した。
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