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卒業式から数日経ち、いよいよ合格発表の日になった。陸と嶺亜は、直接学校に行って合否発表を見に行くことにした。
「うわぁぁ…緊張するぅぅ……」
隣を歩いている陸が、不安でいっぱいになっていた。
「俺もだよ。…ねぇ、陸。」
「ん?」
「合否発表見た後さ…先生のお見舞い行かない?俺らの卒業式の後、また入院生活に戻ったから…心配だし。受検の結果教えたいし。」
「いいよ。実は俺も心配だったんだよ。帰りに寄っていこう。」
陸は笑みを浮かべながら、学校に向かう。学校は家から少しだけ遠く、電車に乗って行った。
志望校に着くと、既に沢山の受検生が集まっていた。
「まだ合否発表出てないのに、凄い人数だな。」
「…何か落ちた気しかしなくなってきた。」
気持ちが沈んでいる陸の隣で、嶺亜は携帯を見る。午前9時58分。発表は午前10時からだ。合否発表が出るのを待っていると、後ろから2人を呼ぶ声が聞こえた。
「神谷!黒澤!」
後ろの方に向くと理科の教師、中山光輝が丁度到着したのか、息を切らしていた。
「良かった…間に合ったか。」
はぁ、はぁと息を整えながら2人に話す。
「中山先生、どうして?」
「佐々木先生の代理だよ。本当は佐々木先生が来る予定だったんだけどね…容態が悪化して来れなくなって…。代わりに行ってきて欲しいって頼まれたんだ。」
「…そう、なんですか。」
中山と話していると、学校の時計が午前10時を指し、合否発表が玄関前に出された。
「お、結果張り出されたな。2人とも行ってこい。」
「…はいっ!」
中山に背中を押された2人は、合否発表の結果を見に行った。2人の受検した高校は、毎年倍率が高く、偏差値も高い難関高校だ。2人は、心を落ち着かせてから合否発表を見た。
「失礼します。」
合否発表後、陸と嶺亜がそう言ってドアを開け、静かに閉める。カーテンからそっと覗くと、ぐったりとベッドに寝ている要の姿があった。
「…先生。」
そう呼ぶと、要は2人の存在に気づき上体を起こした。
「あ…2人とも。来てくれたんだ、ありがとう。」
要はニコッと笑う。前に見た時よりも、大分痩せていた。嶺亜は少し、不安げに要を見ていたが、要が口を開いた。
「…そういえば、2人とも。結果…どうだった?お前ら以外から、全員受かったって報告聞いたけど。」
要が尋ねると、2人はお互い目を合わせて少し暗い表情を見せる。その表情に不安を持つ要。
「え…え?何、もしかして…落ちた?た、確かに偏差値高いからな。落ちても仕方な…」
「受かりました。」
「…え?」
要が言い終わる前に、2人のハモった声が病室に響く。要は混乱する。2人は笑顔を浮かべながらもう一度声を揃えて口を開く。
「合格しました!」
そう言って、2人は携帯を見せる。そこには、2人の受検番号が映っていた。
「…そ、そうか。良かった…良かった。」
「先生?」
急に顔を隠した要に、嶺亜は要の顔を覗く。泣いていた。
「……先生。泣いてる。」
「……っ…ごめ…。その…嬉しくて…。2人とも…おめでとう。」
要は泣きながらも、笑顔を浮かべてそう言った。
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