新人冒険者への指導

クエスト受託

　ある日レイアスが冒険者ギルドに向かうと，ガナンから新しいクエストがあると伝えられる．それは近頃街の周辺で魔族の目撃情報があり，不穏な空気が流れているため，新人冒険者のクエストを見守ってほしいというものであった．イスラーダ帝国の騎士たちが魔族の捜索を行っているため，ギルドとして魔族に関する仕事はないが，身を守る術を持たない新人冒険者には少しの期間ベテランの冒険者が同行することになったとのことである．レイアスは一人前の冒険者とは言い難いが，魔族との戦闘経験もあり，年齢の近い冒険者と行動を共にすることで新人冒険者に良い影響があると考えられたため白羽の矢が立ったのだ．またレイアスにおいても指導をする経験は今後の冒険者生活を送る上で役に立つと考えられたのである．レイアスはそのクエストを快諾し，イリスを伴い草原で集合することになる．
　少年と草原で出会い自己紹介をしたところ新人冒険者の名はグレイといい，双剣使いとのことである．レイアスが名前を述べるとグレイは驚愕した．冒険者志望の若者の間でその名が知れ渡っているそうだ．照れるレイアスであったが，グレイを失望させないよう気を引き締めて取り組むことにする．道中，注意の必要な魔物の対策，有用な薬草の採取方法，装備の手入れなど実務的な情報を細やかに教えるレイアス．それに対しグレイは緊張している様子はあるものの，レイアスの一挙手一投足に注目し，冒険者としての振る舞いを身に着けようと努力する様子が見て取れる．レイアスのアドバイスに従い順調にグレイはモンスターの討伐素材を集め，遂に後はギルドで報告すればクエスト達成となる．
　帰路についた三人．街も近づいてきたところ，一瞬周囲が暗くなる．空を見上げるとヴァルザンデスが街の近くの草原に降下するところであった．レイアスはイリスとグレイに避難するよう告げ，自身はヴァルザンデスとの戦いに身を投じた．善戦はするが疲弊していくレイアス．しかし諦めることなく立ち向かっていく．その様子を見て，グレイも参戦し激しい戦いが始まる．膠着状態は続いていたが，イリスの呼びかけに応えて駆け付けた騎士団も加わり，どうにか退けることに成功する．互いの健闘を称えあうが，グレイは思案顔であった．しばらく無言であったがレイアスと日を改めて草原で会いたいと申し出る．