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「ねぇ、グリィ。どうしてこの里のヒトたちは隠れてるの?」
彼の付きっきりの看病もあり、私は三日で元気になった。恐らく異世界の空気に耐性がなく、体調を崩してしまっただけだろう。
そして、今日が彼とお別れの日だ。元気になったら立ち去る。そういう約束なのだから。
「外の世界では、我々の肉を食べれば不死になれると信じられている。だから逃げるしかなかった」
それを聞いて、私は一つの恩返しを思い付いた。我ながら、とてもいい案だ。
「………グリィのお肉、食べさせて」
「間違いだからな」
「わかってるよ。ほら、その使えない翼のほんの一部でいいから」
「興味本意か? 別に構わんが」
「あ、いいんだ」
「翼と尻尾は再生する」
彼はそう言って、自分の翼の一部をもいだ。予想より多いが、それに越したことはない。
「ありがと」
「何に使うんだ」
私は答えない。霧が深くなるなかを二人で黙って進む。ある地点まで来ると彼は立ち止まった。ここが、隠れ里と外の境界なのだろう。
「グリィは、ここから出れないんだよね?」
「ああ」
私の目の前に彼がいて、彼の目の前に私がいる。それでもここには、破ってはいけない壁がある。
「なら、さっきの質問、もう一回して」
「何に、俺の肉を使うんだ」
「私が皆の前でこれを食べて、自殺する。それで私が死ねば、グリィたちは隠れなくて済む」
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