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異世界からやって来た私を匿ってくれた、優しい人外がいた。モデルは人なのに、硬そうな尻尾と翼と爪を持つ、まるでドラゴンと人間を混ぜたような容姿の人外だった。
そんな彼の腕の中で、私は二十五歳の誕生日を迎える。
環境の激変で、私の体は限界だった。もう生きていられない。
私たちは種が違う。子供はできなかった。
私たちは種が違う。彼のはまだまだ生きる。
私たちは種が違う。それでも、心は一緒だ。
もしあの時逃げ切ってあれば、違う世界が私を受け入れてくれたかもしれない。彼が私に「一緒に居てほしい」と言ったのは、ただ寂しくて誰でも良かったのかもしれない。
それでも私は、彼と一緒に居る道を選んだ。
そして、居れて幸せだった。
「嫌い………」
私はその言葉を三回繰り返してから、彼にこう言う。
「大好き」
人生の終演が私に見せてくれた景色は、好きなヒトと出会った場所で、好きなヒトが泣き笑う姿だった。
私はその光景を目に焼き付け、そっと瞑る。最後に、言いたい言葉があった。
私たちを繋ぐ、架け橋のような言葉────。
────ありがとう。
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