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「サドルがねぇんだよ」
幾分ふてたような声で答えると
「は?」
「だから、俺のサドルがなくなってたの!サドルだけ!」
電話のむこうで嫁が吹き出した。
「笑えないよ!恥ずかしかったし
乗るのはかなり勇気がいる!」
また笑いだす。
「とりあえず帰っておいでよ、
チャリ停めたら
いたたまれない俺のチャリを見てくれ」
笑いながら、うんうんと言って
電話が切れた。
嫁を待つ間
俺はあることを思い出していた。
そして、
ふいた。
吹き出して
笑った。
忘れてたわ……。
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