4人が本棚に入れています
本棚に追加
ずっと好きな人がいる。でもこれはきっと、わたしだけの想い。それも長く、儚く、遠い時間の流れに逆らうようにして、恋心を残している。好きという自覚は幼稚園の卒園式の時。思えばその頃から、恋をしているということに気付いていたのかもしれない。
「ナオくん、一緒に座ってていーい?」
「んー?」
小さな男の子ナオくんは、目鼻立ちがハッキリしていてみんなの人気者。やんちゃだけど、意地悪いことはしない格好いい男の子。天気が良くて日向ぼっこをしている時に、ナオくんの隣に座りたくて真っ先に声をかけていた。
「あったかいなぁ。ミチルも思うー?」
「うん、あったかい。でもね、ナオくんの隣だからもっとあったかいよー」
「そっかぁ」
ナオくんの隣に座ってるだけでいい。横顔だけど、ずっと見てたい。あんまり話とかしてこないけど、それでもよくて、わたしがナオくんの傍にいたいだけだったんだと思う。それでもそれは長く続かなくて、男の子だから、いきなり何か面白いことを思い付いたらすぐに立ち上がって、どこかに行ってしまう。
わたしにとってはそれが精一杯の気持ちのアピール。他の子みたいにナオくんにくっついたりなんて出来なくて、時々こうしてただ黙って座っている彼の隣にいるだけで良かった。そうしてそんな日を毎日のようにしていたけれど、卒園式の時に何をどう言えるわけでも無くてナオくんは、引っ越しをしていった。恋の芽生えは初恋じゃなかったかもしれないけれど、意識しだしたのがこの頃からだった。
小学校に上がって、好きが膨らんだと自分でも分かったのは体育の時。他の男子とは明らかに動きが違ったし、彼が手にしたバスケットボールは気持ちのいいくらいに、ゴールへ吸い込まれていく。機敏な動きに、クールな表情。時折見せるはにかんだ笑顔はわたしじゃなくても、好きになってたと思う。
こうなると話しかけたもの勝ちじゃないけれど、彼と仲良くなりたい女子はこぞって彼の所に行ったり来たり。わたしの想いのアピールは幼稚園の頃から変わっていなくて、見てるだけでよかったりした。
それでも、たまたま体育館で壁に寄りかかってたりした時に、彼が隣にいたりしてその時は何か声をかけて来てくれたらいいな。なんて思っていたりして恋心を抱いていた。たぶんこれがわたしの初恋。
最初のコメントを投稿しよう!