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それで本当に偶然だけれど、誰かの手元が狂ってボールがわたしの所に飛んできたのを、彼が手で守ってくれて、それが話しかけのきっかけを得られたりして嬉しかった。
「あっぶねー。ったく、誰だよ。当たらなくてよかったよなー。なっ?」
「う、うん。ありがと、タカトくん」
わたしとタカトくんが話したのはこれだけ。6年間のうち、同じクラスになれたのは4年くらいだったけれど、男子は男子たちだけで遊んでることが多かったから、積極的にどうこうとか出来なくてやっぱり、見てただけ。恋の心を膨らませながら、想いを抱いてた。
それでも、何度か話をすることもあって、わたしと話すタカトくんの笑顔はすごく優しくて、その度に好きになってた。彼はわたしの名前なんて覚えてないだろうし、呼ぶこともほとんど無かったけれど言いかけたのかなって思う時も何度かあった。
「あ、あのさ、ミチ……」
「タカトー! 校庭行こうぜー」
「お、おー! 今行く」
何か話したいことでもあったのかな。そう思っていたのはたぶん、わたしだけ。時々、ちらちらとわたしを気にしている時があったけれど、あれは何だったのかな。結局、小学校も恋を抱いたまま何も言えなくて卒業。
中学は同じ地区だから、タカトくんもそのまま同じ中学に上がって来た。3年間、同じクラスになることは無かったけれど、彼とは陸上の部活で一緒になれた。わたしは短距離、彼は長・中距離。
お互いに同じ所にいれば話くらいはしてもおかしくなくて、タオルとか渡すくらいは当たり前だった。水とか、スポーツドリンクだって簡単に渡せるし、だからといってそれをそのまま飲めなかったけれど。
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