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「ミチル、頑張ってんね。てか、足速い」
「や、距離短いから。タカトくんは体力すごいじゃない」
「それだけが取り柄なんだよなー」
部活が一緒だから、名前を呼び合うのも話しかけるのも当たり前で、でもそれだけのことだった。気にしてたり、彼の走ってる姿を眺めるのが気持ち長かったり、意識してたのはわたしだけだったと思う。
大会とかで記録なんて残せるほど伸びなくて、ホントに部活してるってだけで終わった陸上。3年なんてあっという間に終えてしまう。好きな心を抱いたまま、やっぱり言葉に出して言えなくて。
「ミチルは高校でも続けんの?」
「んん、たぶんやめる、かな」
「そっか。ミチルの走ってる姿、格好良かったけどな。んじゃ、俺行くから」
「あ……」
タカトくんに想いを伝えられなくて、そのまま卒業。高校は別々になった。せめて連絡先とか交換しとけば良かったと思っていたけれど、高校ともなれば友達関係とか違って来るし陸上もやめてるし、何を話せばいいのかなんて分からなくなるはずだから、交換とか出来なかった。
タカトくんとは別に、高校では彼氏が出来たけれど何でか上手く行かなくて、彼氏に言われた言葉は「浮気してるだろ?」なんて思いもよらない言葉だったりした。
否定も肯定もしなくて、結局別れてしまった。浮気と言われて、それはたぶん別な彼に想いを抱き続けていることなんだろうなと思った。想いを打ち明けられなくて、心を膨らませたままで終わった中学時代。
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