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「おい、お前。名前は?」中学2年の1学期。知らない男子に声をかけられて、私はあっけにとられていた。「さ、佐伯瑞穂」「じゃ、みんぞうだな」どうやら隣のクラスの男子らしい。妙なあだ名をつけられた私は、廊下ですれ違う度にからかわれた。いつしか、クラスメイトにみんぞうが浸透してしまった。
「おい、みんぞう。よろしくな」3年生になり、アイツはクラスメイトになった。受験で何処かピリピリした雰囲気の中。アイツは飄々としていた。勉強するどころか、アニメの物まねでふざけているのに、成績は私より良くて、真面目に勉強していた私はイラっとしていた。
通っているピアノ教室に、可愛い双子がいた。聞いてみると、兄を待っているという。兄には好きな女子がいて、なかなか告白できないという。そんなシャイな男子なんて、珍しい。「なんだ。みんぞうか」出てきたのは、なんとアイツ。ピアノ教室が一緒だなんて気がつかなかった。入れ替わる瞬間に妹さんが「好きな人に変なあだ名しかつけられないんだって」えっ!!それって...まさか...!!
1学期の終わりにアイツは、親の仕事の都合で転校する事になった。みんなで色紙を書いたが、アイツはいつもより無愛想。「おい、瑞穂」え?みんぞうじゃないの?「お前さあ、クソ真面目なんだよ。もっと力抜いたら?」アイツはそれだけ言って転校していった。いつの間にか、みんぞうとも呼ばれなくなった。名前を呼び捨てにされたのは、あの時のアイツだけ。あの時、呼び間違ったのは、きっと、あつかったからだと思っている。
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