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当時は取り敢えず行き先が決まるまで、という約束の元ぎこちなく共同生活を始めたのだったが、男は今では出て行く素振りなどまるでなく、俺も彼が居て当たり前の生活を送る毎日となっている。
もう一年も経つのか、と男のことを考えてふと感慨に浸る俺は、今年で39歳になる。駅前でしがない花屋を営む独り身の男が、40代を目前にして、親からはそろそろ再婚を勧められている状況の中、親子と言うにしても、兄弟と言うとしても、若干無理がある二十代前半の若い男とアパートで二人暮らしをしている。
さて。これを読んでいる読者諸君には、俺がこの自分の歳も分からん男と出会い、なぜ同居するまでに至ったかという話をしたいと思う。
それをするにはまず俺自身、辛い話から始めなくてはならないことと、必ずしも読者諸君には理解の及ばない不可解な点がいくつも出てくる可能性というのをここに先ず記しておく。
それを重々に留意しておいてもらった上で、
この不可解で不思議で理屈では到底説明しきれない物語の主人公は、俺、そして彼。同時に彼女の話でもある。
事実は小説よりも奇なりと言う言葉を昔誰かが残した通り、俺と彼の関係性を語る上ではその言葉が何よりも力を持つのではないかと自負する。
俺はこの不思議な話を今後誰かに公表する予定も、つもりもない。だから読者諸君はこの話を俺の妄想か、あるいは作り話だと思って読んでいて欲しいと思う。
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