彼女の死

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二人だけで何処かへ出かけることも、手を繋ぐことさえなく、サークルでだけの逢瀬だった俺達は、俺が大学を卒業したことで段々と疎遠になり、やがてどちらからともなく、すっかり連絡も取らなくなった。 そんな彼女と再会をしたのは、仕事にそろそろ慣れ始めて、俺が26歳の時。大学を卒業して約四年が経っていた。 父がやっていたしがない花屋を継いで、しがないながら忙しい日々を送っていた。 その花屋に、偶然彼女が花を買いに来た。 「え!葵先輩!」 化粧も上達して、大人びていた彼女だったが、俺を呼ぶ無邪気な声は当時のままだった。 四年が経ったとは思えないほど俺達は自然に会話を弾ませて、会わなかった四年の月日を不思議と直ぐに縮められた。 「葵って名字で、お花屋さんなんてぴったりですね。」 控えめなリップが塗られた唇で、彼女は花が咲くように笑った。 「菊地だって、名字にも名前にも花だらけじゃないか。」 「あ。本当だ。じゃあ、私達、結婚したらお花畑になっちゃいますね!」 そんな彼女の無邪気な言葉が、胸に深々と突き刺さって、俺の心の奥に、じんわりと暖かいものを落とした感覚を、まだ覚えてる。 きっと、大学時代勇気のない俺を、彼女はずっと待ち続けていてくれたのだろうとその時に思った。 待って、待って、待ち続けて、そして偶然また巡り会った。     
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