彼女の死

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その機会でも、俺は怖じ気付いて言えなかった言葉を、彼女は花のような笑顔でいとも容易く胸を張って言って見せた。 少し見ない間に、彼女はとても強くなっていたのだと感じた。 いや、あるいは彼女は元からとっくに俺みたいな根性なしよりも強かったのかもしれない。 会わなかった四年間も、好きでいてくれた。忘れないで居てくれた。 俺にはそれだけでくすぐったいような、可笑しいような、暖かいような、多幸感を強く感じた。 彼女の無邪気な言葉がよもや俺に彼女との結婚を決意させる決め手になろうとは、俺もさながら根性なしが過ぎるぞ、と内心酷く反省したものだったが、 幸せだった。すごく。 だけど、その幸せは、残酷にも長くは続かない。
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