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暗いうちから起き出して、慣れないおばあちゃんちの台所で四苦八苦しながらなんとかお弁当を作り上げ、駅へと向かった。そこで第二の悲劇が起きた。お財布を、おばあちゃんの家に置いて来てしまったのだ。
片道30分強の道のりをダッシュして戻ると、既におばあちゃんはいなかった。そういえば今朝は、早朝太極拳に老人会の皆と参加するって言ってたっけ。あたしは通りがかりの近所の人たちに必死になって尋ねて、おばあちゃんのいる公園を見つけ出した。
「おばあちゃぁぁぁん」
「あれあれサキちゃん。どうしたんだい、泣きべそなんてかいて」
おばあちゃんからお金を借りて、再び駅に舞い戻った。でもこの駅から出ている電車の本数は、一時間に二本しかなく、もう遅刻は確実だった。それでもいい、なんとかお昼の時間に間に合えば。省吾にお弁当を届ける事ができれば。……そう願っていたのに。
あたしが学校に辿り着いたのは、昼休憩に入るわずか10分前だった。
待ちかねた電車に飛び乗って、あたしとした事が安堵のあまり眠ってしまい、気付いたのは乗り換え駅の遥か先を過ぎてから。半ベソをになって折り返しの電車に乗ったら、まさかのそれはニ時間に一本の特急電車。車窓に流れて過ぎ去っていく乗り換え駅を、茫然と見送った。
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