はらぺこLOVERS

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 ここまで来ると、神様の悪戯だなんてお茶目なもんじゃなくて、運命的にあたしのお弁当が省吾に届かないように仕組まれているのでは、としか思えなくなってきた。ザ・絶望。  それでも駅に着いたら全速力でダッシュして(これなら長距離選手でもイケるんじゃないかという猛スピードで)、校門に飛び込んだ。グラウンドでは大歓声の中、サッカー競技が盛り上がっている。省吾はハードル選手の脚力を買われて、バスケの試合に参戦しているはず。会場の体育館のはずれに、あたしは省吾の後ろ姿を見つけた。 「省吾! お待たせ……」  駆け寄ろうとして、省吾のそばに一人の女子生徒がいるのに気付き、足を止めた。小柄なスタイルにふんわりロングのあの子は、確か3組の小清水さんだ。彼女の手には、ピンクのナプキンで包まれた、ランチボックスが。省吾の顔は見えない。見えなかったけれど…… 「あぶないっ! よけろっ!!」 「へっ?」  背後から聴こえてきた突き刺さるような声に振り向くと、 「櫻井っ!」  飛んできた、弾丸みたいなスピードのサッカーボールを顔面に受けて、あたしの記憶はそこで途切れた。ああ、ホントになんて最悪な一日。でも最後にあたしの名前を呼んでくれたあの声は、省吾だ。……それだけで、……もう、……充分……。     
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