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夢の中で、省吾と小清水さんが微笑み合いながら、ピンクのナプキンに載せられたお弁当を美味しそうに食べていた。そうか。わかった。今日一日、朝からあたしの運勢が最悪だったのは、神様が省吾と小清水さんを引き合わせようとしていたからなんだ。
これは罰だ。
こんな事になるなら、省吾にちゃんと告白をしておけばよかった。「あたしに、お弁当を作らせて」って。「仕方がないから作ってあげる」みたいな、あんな小芝居なんか打ったりしないで。傷つくのが怖くて、気持ちを隠しながら、お弁当を作ろうとしていた罰なんだ。ちゃんと想いを告げて振られた方が、どんなにすっきりとした事だろう。可哀そうなあたしのお弁当。あたしのせいで、省吾に食べてもらえなくて。食べ物に、罪はないのに。
涙が頬を伝って目が覚めるかと思ったら、
『グ、グ、グゥ、グゥゥゥゥゥー』
実際には、自分のお腹の音に驚いて目を開けた。
「大丈夫か!? 櫻井!」
「……省吾?」
保健室のベッドで目覚めたあたし。目の前には省吾。少女マンガのワンシーンの様な状況なのに、目覚めのきっかけは、王子様からのキスじゃなくて、空腹を告げるお腹の声。あたしのお腹よ、お前にはロマンチック・クラッシャーの名を与えよう。
「俺が分かるんだな?! 良かったぁ。記憶喪失とかになってなくて」
『グゥ、グ、グゥ、グゥゥゥゥゥゥゥー』
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