赤い勇者

4/7

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
赤い勇者が販売員に向かって激しく叱責を繰り返す。赤い勇者の頭は、勇者らしくツンツンと尖っていたが、性格までしっかりと尖っていたんだ。なんて野郎だ。こんな奴が勇者だなんて。 「いらっしゃいませ勇者様!お困りですね?しかし、安心してください!こういうものです。魔王をあまく見てはいけませんよ、勇者様!魔王は、なかなか死なないものなんです。だから、この世界にまで逃げて平然とサラリーマンに乗り移って生きている。図々しいものなんですよ、魔王っていう存在は!」 販売員はニコニコと笑いながら、怒っている。たぶんこの販売員は俺以上に、赤い勇者以上に内心怒っているが、ニコニコした表情を崩さない。よくできた販売員だ。 俺の体の炎はじょじょに消えていく。どうなってんだか俺にも分からないが、熱い炎も俺を焦がすことはできないようだ。多少ワイシャツが焦げた程度で、俺はぴんぴんしている。 赤い勇者が驚いた表情で怯えている。なんだ、この状況は。俺はいつもどおり池袋で降りて仕事に向かおうとしていただけなのに。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加