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「お姉さん、はじめまして。美里さんとお付き合いさせていただいています、藤原辰己といいます」
改めて、丁寧にお辞儀をされて、私もお辞儀になった。
「は、はじめまして。い、妹がお世話になっています」
「挨拶も終わったし、一緒に帰ろう」
「美里、もしかして、尾行していたの…」
「気づいていたよ」
いつも可愛い笑顔で言った。今が天使の笑顔というより小悪魔の微笑みに見えるのは気のせいだろうか。
二人の後を歩きながら、隣にはタマが歩いている。それだけでさっきのことを思い出して、心臓の鼓動が早くなる。
「そうだ、美羽」
「うん?」
タマは耳元に口を近づけてきて、ドキッとした。
「お前は綺麗だし、裏表なくて明るくて優しい」
びっくりして、私はタマの顔を見た。
「昔から美里と比べるなんておかしいんだよ。美羽は美羽だろ」
優しい言葉とともにとろけるような笑顔を向けられ、涙が流れそうになった。
「うん!」
涙をこらえて、満面の笑顔で浮かべた
「おまえがモテ始めたのが、わかった気がする」
目をそらしながら、タマが何かをつぶやいたが聞こえない。
「何か言った?」
「タマと美羽ちゃん、おいていくよ」
美里が少し離れ始めた私達に声をかける。
「行くか」
「うん」
私達は小走りで前の二人のもとに行く。
梅雨が終わりはじめ、蝉がそろそろ鳴き始める頃、私達の関係が変わっていくのはもう少し先の話になりそうだ。
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