第1章 

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第1章 

翌日の昼休み、私はもう1人の協力者を求めて、下級生のクラスへ向かった。 妹のクラスの教室を通り過ぎ、隣のクラスの前で足を止めた。 すると、教室の扉から、女子生徒が出てきた。 「…あ、ごめん。玉木志貴って」 「美羽」 声を掛けようとしたとき、後ろから声がして振り返る。 後ろには、背の高い黒髪のよく知る男子が立っていた。 「タマ!」 にっこり笑って走り寄る。彼は妹と同い年の幼馴染、玉木志貴だ。 隣の家に住んでいて、昔から家族ぐるみの付き合いをしている。 妹とともに、今年からこの高校に入学してきた。 タマの頭の良さなら、もっといい学校に行けたが、家が近いからとこの高校を選んだ。 「その呼び名で呼ぶなよ」 溜息をつきながら、私を見降ろしている。いつも通りのやりとりだ。 「また、背伸びたんじゃない?」 「美羽が縮んだんじゃない?」 「ホント、年下なのに生意気!……なんだ、元気そうじゃん」 タマがいつも通りなのに、私はホッとした。 妹の話を聞いた後、頭に浮かんだのはタマの顔だった。 タマはおそらく妹と同じ学年だから、彼女の彼氏ができた話を知っていたのだろう。 おそらくタマは妹が好きなのではないかと感じていた。 だからこそ、ショックを受けたのではないかと心配していたのだ。 「え?」 私のつぶやいた一言は聞こえなかったのか、タマは首を傾げた。 「何でもない。お昼まだでしょ?…久しぶりに一緒に食べるぞー!」 二人分のお弁当を掲げて、私はタマを昼食に誘った。 「…また、何を相談するんだか」 私が手作り弁当をもって昼に誘うときは、だいたい相談事があるときなので慣れたように私の後をついて歩き出した。 屋上に移動した私達は、心地よい風を感じながらお弁当を食べた。 「お前、おおざっぱに見えて、昔から料理うまいよな」 タマはしみじみ食べながらそう言った。 「一言多い!」 「で、相談があるんじゃないのか?」 お弁当のごはんをかきこみながら、私に問いかけた。 「タマって、美里に好きな人がいて、告白したこと知っていた?」 「あぁ。というか、美里の好きな先輩と俺の仲いい部活の先輩が友達だから、相談に乗ったり協力したりしていたんだよ」 「え!」 驚きの事実をさらりと暴露されて、唖然とした。
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