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「おい、いつまでそこにいるんだよ」
俺は美羽が屋上からいなくなったのを確認してから、屋上の陰に隠れる人影を見つけて声をかけた。
「ばれていた?」
「バレバレ。おまえの姉貴は気づいていないけどな」
「美羽ちゃんは鈍感だもん。そこがかわいいだけど」
姉と似た顔でにっこり笑ったこいつは立羽美里、美羽の妹だ。
この姉妹は互いに重度のシスコンだ。昔からそれぞれの相談事の聞き役だったので、姉妹の性格も把握しているほうだ。美里の方が結構腹黒いということもわかっている。
「よく先輩もこいつのこと好きになったよな」
「先輩はどんな私も受け入れるって言ってくれたもん」
本当に幸せそうに笑う美里は無性にむかついて、目を背けた。
「美羽ちゃん、やっぱりデート尾行するんだ」
「そうらしいな」
「へぇ。じゃあ、あんたもチャンスじゃん」
「はぁ?」
美里は無理やり両手で俺の顔を自分のほうに向けさせた。
「これで協力してくれた借りは返したから。私が作ったチャンスは無駄にしないでよね」
パッと手を離して、屋上を出ていく。
「なんだよ。この姉妹は」
昔からこの姉妹には振り回されていたが、今回もまた振り回されるらしい。
しかし、別に嫌いなわけではない自分がいるのに、去年までは気づかないフリをした。
ある気持ちを自覚するまでは…。
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