第1章 

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「おい、いつまでそこにいるんだよ」 俺は美羽が屋上からいなくなったのを確認してから、屋上の陰に隠れる人影を見つけて声をかけた。 「ばれていた?」 「バレバレ。おまえの姉貴は気づいていないけどな」 「美羽ちゃんは鈍感だもん。そこがかわいいだけど」 姉と似た顔でにっこり笑ったこいつは立羽美里、美羽の妹だ。 この姉妹は互いに重度のシスコンだ。昔からそれぞれの相談事の聞き役だったので、姉妹の性格も把握しているほうだ。美里の方が結構腹黒いということもわかっている。 「よく先輩もこいつのこと好きになったよな」 「先輩はどんな私も受け入れるって言ってくれたもん」 本当に幸せそうに笑う美里は無性にむかついて、目を背けた。 「美羽ちゃん、やっぱりデート尾行するんだ」 「そうらしいな」 「へぇ。じゃあ、あんたもチャンスじゃん」 「はぁ?」 美里は無理やり両手で俺の顔を自分のほうに向けさせた。 「これで協力してくれた借りは返したから。私が作ったチャンスは無駄にしないでよね」 パッと手を離して、屋上を出ていく。 「なんだよ。この姉妹は」 昔からこの姉妹には振り回されていたが、今回もまた振り回されるらしい。 しかし、別に嫌いなわけではない自分がいるのに、去年までは気づかないフリをした。 ある気持ちを自覚するまでは…。
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