二百万人のテロリストの確信

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 市街地が近いこと? 地価が安いこと? 治安の悪さ?  いくつかは思い浮かぶが、この町以上にそれらの条件に当てはまる町なんていくらだってある。  二百万ものテロリストをわざわざ一か所に集める理由にはなりそうになかった。  他にこの町の近くにあるものといえば……そういえば、町の外ではあるけれど、ダムが近くにある、とか誰かがいっていたような気がする。  ダム。そうだそのダムを破壊すれば、近隣に相当な被害を与えられるだろう。でも、ダムは駄目だ。私はそのダムのことをよく知らない。  ダムの線は消えた。他に、なにか考えられそうなことといえば……テロリストの都合で考えてみるんだ。  私がテロリストだとしたら、なにを気にして潜伏先を選ぶだろう。  目的地までの距離……潜みやすさ……武器の調達……食料調達……人員の補給……寝床……アジト……そうだ。アジト。そうに違いない。  二百万人ものテロリストを収容することの可能な施設となると、相当なサイズになるに違いない。  けれどこの町にかつてあった炭鉱、その跡地を使って地下アジトを作れば、二百万人だろうと隠し通すことができるだろう。  私の脳内で次々とパズルのピースが埋まっていく。  もはやテロリストとの対決は避けられそうになかった。  私は警察に通報しようと再びスマートフォンを開いた。けれど、やめた。  二百万人のテロリスト、だ。この町の人口を大幅に上回るテロリストがこの町を見張っているんだぞ。住民、そして私の行動なんて奴らに筒抜けに決まっているじゃないか!  そうだね。その通りだわ。流石の推理力ね。私一人じゃとてもそこまで考えが及ばなかったわ。ありがとう。  私はスマートフォンを机に戻した。念のために電源も切っておいた。  ん? 私はさっき誰にお礼をいったのだっけ? いや、いいよね。親切にしてもらったらお礼をいうのは当たり前だから。
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