先輩彼女は頼られたい!

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 ***  引退したコウくんは、受験生となった。  部活がなくなったからといって、気軽にデートできるわけでもない。でもコウくんはできるだけ私のために時間を作ろうとしてくれていたし、私はついそれに甘えてしまう。 「モモちゃんが空いてる日にできるだけ合わせるから、遠慮なく言ってね」 「いつも甘やかしてくれるのは嬉しいけど、コウくん受験生だし無理しちゃダメだからね」 「大丈夫、俺がすきでやってることだから」  だってモモちゃん可愛いからさ、甘やかしてあげたくなっちゃうんだよね。そう言ってずるく笑うコウくんに、私はまた頬を膨らませる。 「私のほうが年上なのに。そのうち年上の魅力ってものが備わるはずだから、覚悟してよね」 「あはは、モモちゃんはそのままでいいんだよ」  たったひとつの年齢の違いなんてたいしたことではないし、大人になったらそんなの関係なくなるし、ただ、年齢にかこつけて私にも弱いところを見せてほしいだけで。  そのときもそんな願望を持ちながらも言うことはできずに、頭をぽんぽんと撫でられながら私はコウくんの「かわいいモモちゃん」で居続けた。  できるだけ私を優先してくれていたコウくんだったけれど、秋が深まる頃にはさすがにそうはいかなくなったようだった。学校生活ではずっと部活に打ち込んできたコウくんは、かなり必死に勉強しないと私が通う高校には入れないらしい。 『ごめんねモモちゃん、しばらく会えないかも』 「受験のほうが大事なんだから謝らないでよ。頑張ってるんだね」  夜に電話をくれたコウくんの声と一緒に、かすかに鉛筆が紙の上を走る音が聞こえる。電話中も机に向かっているらしい。  時計を見ると、日付が変わろうとしていた。途端に眠気を感じて、私は大きくあくびをする。
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