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先輩彼女は頼られたい!
中学三年生になったばかりの頃、私にはじめての彼氏ができた。
コウくんはひとつ年下だけれど、背が高くて大人っぽい、落ち着いた雰囲気の男の子。私とは正反対だ。
私は背が低いから、コウくんと一緒に歩いても私の方が年下だと勘違いされる。酷いときは妹だと思われたりする。その度に頬を膨らませる私に、コウくんはいつも「モモちゃんのそういう可愛いとこがすきだからいいの」と言ってくれる。
ちょっとずるいと思う。そう言われてしまうと、それならまあいっかと思ってしまうから。
私が受験でつらい時期も応援して支えてくれたし、私が高校生となった今も変わらずに大事にしてくれる。付き合ってから一年半経った今でも、コウくんは完璧な彼氏だ。
完璧だからこそ、たまに不安になったりする。
***
夏、コウくんはハンドボール部で県大会の準決勝で接戦の末に敗退し、引退した。
名門でもなんでもない私の母校にとっては十分すごい結果だ。でもきっとコウくんはとても悔しかっただろうと思う。試合が終わった瞬間泣き崩れたコウくんは、けれど大会後に私と会ったときにはいつも通りの笑顔を見せた。
「惜しかったね」
「うん、でも満足のいく結果だった。頼もしい後輩のおかげで安心して引退できるし」
「そっか」
私、知ってるよ。
大会前に後輩と揉めてたってことも、最終的に仲直りして部員一丸となって大会に臨んだことも、私の部活の後輩が教えてくれたから。
満足したことも後輩が頼もしいことも嘘ではないだろうけれど、すぐに晴れ晴れとした表情でいられるほど悔しくないはずがない。声をかけるために更衣室の近くで待っていたとき、泣きながら部員に謝るコウくんの声だって聞こえてきた。
私の前で悔しさを見せてくれないのは、私が頼りないからなのかな。
そう考えることがある度、情けなくなる。
そんなことばかり考えるから、頼ってもらえないのだろうけれど。
だからといって「悔しかったら泣いていいんだよ」なんて、失礼な気がして言えなかった。
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