第十話「真実の価値」

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 一人残された一砥はしばし無言でいたが、やがて何かを決心した顔つきになり、背広のポケットからスマホを取り出した。        *****  枕元の携帯が震え、花衣は無意識にそれを手に取った。  一砥からの着信だった。  一瞬迷った後で、花衣は結局応答ボタンをタップした。 「……もしもし」 「もしもし。俺だ。もしかしてもう寝ていたか?」  いつもの変わりない一砥の声にホッとして、花衣は笑顔で「いえ。寝ようと思って布団に入ったところです」と答えた。 「事故の方はどうですか? モデルさんの怪我は大丈夫でした?」 「ああ、そちらは滞りなく片付いた。怪我も思ったより酷くない。……悪かったな、一人だけ抜けて」 「いえ……」 「あれから何かあったか?」 「え……」  いきなり単刀直入に問われ、花衣はどう答えたものか分からず言葉に詰まった。 「あの、えっと、あるにはあったんですけど、でも会長のお陰で、事なきを得ました」  一砥はクスリと笑い、「随分大げさな言い方だな。そんな大ピンチに陥るようなことがあったのか?」とからかい口調で言った。 「……私の口からは、上手く説明出来ないんですけど……。明日にでも高木秘書に聞いて下さい」 「……いや、報告はもう受けた」 「え?」 「あの二代目のバカ社長に絡まれたんだろう? 嫌な思いをしたな」 「一砥さん……」     
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