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プロローグ
名前を与える
Aという現象、あるいは集団内に漠然とした共通認識がある。誰かが、それをBと呼び始めたとする。初めはBだとその周囲だけで使われるその言葉は、だんだんその周囲の人びとからさらに、それぞれの近い人により伝播し共通認識となる。
現代においては、時間も距離も場所も関係なくネット回線の速度で爆発的に広がっていく。北海道の青年が「熊が出た」と何気無く言った言葉が、3秒後には遥か裏側ブラジルの老夫婦が、話題にするかもしれない。
昔と違い馬、船、電車、飛行機などを使わなくても手紙、ラジオ、テレビ、パソコンなどを介さなくてもいまや手のひらに収まるひとつの道具で誰もがメッセンジャーな時代だ。
同時に手を、文字通り指から離れた言葉が好き勝手に概念という味付けをされ使い古されては消えてゆく
概念がひとたび市民権を得てしまえば、あとは簡単だ。重みを無くし、羽根のように飛んで行き何でもかんでもそれと呼べばいい。
だから、私は最初にその言葉を創ったひとを 嫌うだろう。いや憎んでいる。
■■として定着してしまったのだから。
モニターを眺めながら、男は考えていた。
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