名前

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衆目の関心の中、立ち上がったある男が言う。年は4,50くらいだろうか。 「でも、そのおかげで我々は豊かになった。技術を手にいれ、便利な生活という目を手にいれたのだ」 そうだ、■■がなければ人の目は覚めなかっただろう。進歩という劇薬だ。それによって 恩恵を受けとっている者だっているじゃないか。他にどこに、いつでも質のよいサービスが利用可能という国があるのか 衆目の中から声が上がった。その声を受け、男はより自信を持ったように 「いわば、■■こそ今の現代に現れた彗星であり科学のようなものだ」  と言い切り、周りを睨むように見渡すと着席した。袖口から金色の時計が覗いている。 次の女は語り始めた。 「いいえ、私の弟は、○△によって、いえ其れを遣う人達によって殺されたのです。まだ23 という若さで。こんなことになるなんて…」 と声を詰まらせ、 「彼は真面目で優しすぎた、そして努力家でもあった。愚かだと詰る人もおりましょう。実際にいたのです、陰で非難する人間が。確かに追い詰められるまで、ぼろぼろになるまでする必要は無かった、逃げるという選択もできた」 そこで前を見つめると弱弱しいがはっきりとした声で「しかし 、真面目で優しいという人として大事なことが、裏目に出る社会にしたのは■■なのです。私の弟がすることで代わりに犠牲にならずに済んだ人達もいるはずなのに」 それ以上は耐えられないというようにはらはらと涙を落とし、崩れるように着席した。
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