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「目が覚めましたか、ご気分はどうです?吐き気や頭痛は」
矢継ぎ早に尋ねられ、そもそも自分に言っていると分からなかった。もう一度尋ねられ、自分に言っているのだと分かり
「大丈夫…です」
と答えた。掠れた声だった。そういえば前から風邪のような症状が続いていたのだった。市販の薬と栄養ドリンクで凌いではいたが、仕事が忙しく医者に行くことも出来なかったのだ。
いや、しなかったのか。
「あなたは、ホームに立って電車を待っている途中で倒れたのですよ。周りにいた人の話だと急に倒れるように前に踏み出したのだとか、とっさに腕を掴んで止めてくれた人のおかげで落ちなくて済みましたが、本当に良かった。電車が入ってきてもう少しで到着するところでしたから。大丈夫か、と声を掛けようとしたらもう意識がなかったということで慌てて駅長室に運びましたが、寝息が聞こえたので寝かせていたのです」
と人のよさそうな駅長がいう。アナウンスを遠くに聞いたことはうっすらと覚えていた。まさか倒れたとは。倒れるのも無理はない調子が悪いを越えて限界を迎えたのだろう。今は感じていた身体の怠さも頭痛も幾らかよくなっている。「ありがとうございます。実はここ最近調子が悪くておまけに睡眠不足だったものですから。休ませていただいたおかげで大分よくなりました。ご迷惑をおかけしてすみませんでした。もう行かなければならないので行きますね。」
心配そうな駅長にお礼をいい、駅長室から出た。
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