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「あきらちゃーん。おはよーう。」
僕は一緒に話していた友達の輪を抜けて、あきらちゃんの元に駆け寄る。始業五分前。あきらちゃんは今日も通常運転だ。
横目で見た友達たちはいつも通りにやれやれと言う顔をして、自分の教室へと向かって行く。
「......はよ。」
僕の愛しのあきらちゃんは、今日も今日とて僕の挨拶に呟くような返事しか残さず、すたすたと歩いて行く。でも、これでもだいぶ進歩した。前は華麗に無視されてたからね。
「あきらちゃん、あのね...。」
僕は本当に取り留めもない話をあきらちゃんにする。あきらちゃんは答えない。猫みたいに鋭い可愛いお目目は僕には向けられず、ずっと前を向いて歩いている。
そんな僕らを、周りの人たちは、生暖かい目で見て来る。これはもう、日常茶飯事だから、みんな慣れて、飽きてきちゃったのかな。
あきらちゃんの教室の前に着いた。僕らはクラスが違うから、しばしのお別れだ。
「じゃあ、またね、あきらちゃん。」
「......。」
あきらちゃんは僕を一瞥すると、特に何か言うこともなく、教室に入っていった。
さぁ。
始業まで、後、二分。僕は早足で、自分のクラスへと向かうべく、いつも通り、階段を駆け上がった。
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