1章 リストに載ってないモンスターが出ました

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「そうはいっても、俺みたいな低学歴だと、職歴が一つ増えた程度じゃ書類審査が通らないことなんてのもザラですから」 「気が弱ぇな」  発注したクエストの受注には内容によって激しく差が開く応募が集まり、高級素材や技術革新に関わる素材を採取できるモンスターの討伐依頼や、ダンジョンの探索以来の応募ともなれば高い倍率に昇る。 「それに――」と前置きして、マッドは続けた。 「今付き合ってる彼女とも結婚したいんすけど、そうなるとやっぱ会社に勤めて安定を確保しておかないと向こうの両親にも心配されますから」 「ですよね……」  苦笑いしながら新婚のロットが頷いた。彼も、妻以上に相手の両親を口説き落とすのに苦労した過去がある。  そんな世知辛い会話をしながら3人は歩いていたが、ふとロットが声を上げた。 「ん……?」  双眼鏡等、討伐に使う備品の動作確認リストを確認している最中、『視界は明瞭に映っているか』『ズームに誤差は無いか』等の項目にいつも通りチェックを付けていくロットだったが、急に立ち止まった。 「どうした?レンズにヒビでも入ってたか?」 「いや、違います。先輩、ちょっとアレ見てもらっていいすか?」  そう言いながら、少し慌ててエッジに遠望鏡を差し出す。 「何だよ。イレギュラーなモンスターでも出たかよ」  昨日のロットがそうだったように、討伐対象以外のモンスターが出現するケースもある。 しかし、それらは本来なら自分達のクエストの対象外と言うだけの話。管轄内のギルド宛てに討伐クエストが発注されており、他のパーティーが受注されている状態が殆どだ。 「アイツなんですけど……『アカシュモク・ネッシー』なんか討伐依頼出されてましたか?少なくとも僕は共有フォルダには記載がなかったと思うんですけど……」 「あ。本当だ。珍しいな、こんなところに繁殖期でもないのに出てくるなんて」    付近を流れている大きな川を見れば、緩やかに流れる水面に大きな首をもたげて悠然と泳ぐ首長竜の姿があった。左右の目が大きく張り出しているのが特徴で、この魔物からとれる鱗やヒレ、肝油などは高級素材として多方面で重宝される。   「コレ、ラッキーですよ。あいつはクエストとして掲示される前の【事前討伐】だとしてもギルド側から報酬金がいくらかでますし、何よりもアイツからとれる鱗やヒレは、どれも換金可能な素材ですよ!」
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