1章 リストに載ってないモンスターが出ました

12/16

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「やったな! 今日討伐予定の『ヤタ・ドードー』2体の報酬金なんか目じゃねぇぜ」  喜ぶ二人に、最年長のエッジが釘をさす。 「けど、一応ギルドと会社に報告しとけよ。まぁ、どうせ討伐許可降りるだろうけど」 「了解です。一回ギルドに確認してみます」  出動ごとに討伐したモンスターの頭数は正確に把握することは社内統制 業務の効率性の確保のためにも必須事項。管理部への無断の討伐や、討伐個体の報告漏れは後々トラブルの元になる。  手持ちの通信機器でギルドの事務所に連絡を取るロットの顔は、思わぬ喜びでほころんでいた。そして通信を切ったロットが「やりましたよ」と親指を立てる。 「とりあえず、先にギルドへ確認しました。やっぱり、今のところギルドへアイツの討伐依頼は出てないそうです」 「本当か?じゃ、俺らが討伐していいってことか」 「アイテムに関しては滅茶苦茶厳しいっちゃ厳しいですけど、まぁそこは近くの薬草とか薬用キノコ採取すればギリいけますもんね」 「おぉ。そうだな」  エッジは弾薬を確認し始めるが、一方でマッドが渋面になった。 「けど、どーかなー。また他所の会社、『ワラベヤ』辺りがまた登録漏れしてるとかじゃねぇのかな?アソコ多いじゃないっすか。後になって『ソッチで討伐したモンスターはウチが依頼されてた個体だ』って言いだすこと」  一般にモンスターの討伐依頼は依頼人がギルドへ申請し、届けられた各依頼をクエストとして発注するのが通常の流れ。貼りだされたクエストを会社やフリーなど、各勇者が受注して依頼人との間で契約が間接的に完了となる。  しかし、依頼人と勇者側がギルドを通さずに直で契約を結ぶ場合もあり、そういったケースでは受注した勇者がギルドに報告を入れなければ、別の依頼者が現れてしまい、一体のモンスターに対して二人の依頼人と勇者が存在する二重契約状態に陥ってしまう可能性があるのだ。  この場合、モンスターの所有権や依頼人との報酬金のやり取りは「早い者勝ち」が勇者界隈での慣例。とはいっても、後で勇者通しの間でトラブルの種になってしまうケースは珍しくない。 「だとしても知ったこっちゃねぇよ。報告してねぇ奴が悪いんだ」 「ですよね」  エッジの意見を聞くなりロットはニヤリと笑って「じゃ、会社の方にも連絡通しときます」と事務所の方へと連絡をかける。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加