1章 リストに載ってないモンスターが出ました

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 しかし、そこで顔色が曇った。 「――え、まじすか」 「ん?どうした」 「それが……今、管理部に電話かけたら『今日のクエストだけやってくれ』って渋られまして……」 「はぁ?」 「嘘っ。アイツ倒せば会社的にも十分利益出るだろ」 「なんか拘束時間増やされる方がイヤみたいっすね」 「バカか!?アイツ倒せば俺らの残業代以上の儲けが出るだろ――つぅか、どうせ残業代も出さねぇし――。そもそも骨一本切り出せば、ソレで俺ら1日分程度の額の金ができるぞ」 「いや……なんか、言い方からすると『法律がうるさい』って話らしいです。只でさえ昨日俺が長時間クエスト言ってるから、ここでまた規定よりも長く拘束してると、いよいよ時間外勤務が伸びすぎて厳しいって……」 「~~、そんなこと言うんだったら、普段から人手間に合わせて受注しろってんだよ!そんなだからこういうチャンスの時に問題起きるんだろうが」 「あと、なんか経理も難色……って空気みたいですね。今受話器の向こうで、経理のエルナンさんが愚痴ってるのが聞こえました」 「面倒くせぇ奴だな。大学出てるくせに目先の損得勘定しかできねぇしよ。なんであんな面倒臭い杓子定規な女に会社の金庫番させるかなぁ」 「まぁ、杓子定規ぐらいが丁度いいんじゃないっすか?算盤弾くのには」  エッジとマッドの会話に、ロットがさらに言葉を重ねる。 「ただ、実際問題既定の会社への帰還時刻は大幅にオーバーするのが確定ですし、アイツ相手に回復薬とか消耗してたら、あとで と闘うのに必要な分調達して回る必要もありますから……結構なロスタイムですよ」 「何弱気な事言ってんだよ。ウチらならイケるだろ。エッジ班長はウチに来る前に大手で闘ってた経験あるし、俺もフリー時代に一人で倒したことあるぜ」  マッドは強気だが、エッジはここで一旦冷静になる。 「けど、アレ変種じゃねぇか」  モンスターは一般的なものとその他の種類に区別されており、『亜種』『突然変種』など様々な呼称がある。 もっともそういった呼び名はギルド側や会社の管理部がモンスターの討伐于数を区別して計上する作業における事務的な効率から生まれたもの。なので、現場のハンター達は個体の性質は把握しても、呼称の由来は把握してなかったり、適当に呼んでいるケースは多い。
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