1章 リストに載ってないモンスターが出ました

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「――で、結果バイトが集まらないとウチら社員に皺が寄るワケっすよ。勘弁してほしいですよね」 「やらやれ……。でよ、今回のクエスト用に出されてる支給品は?お前もって来てないの?」 「あ、それなんすけど、今日はロットが昨日の討伐クエストが終わったあと時間的に微妙だっつって、ベースキャンプに泊まりなんすよ。で、直でこのエリアまで来るらしいんで、ついでに持ってくるって言ってました」 「何?アイツ昨日のクエから泊まりなの?」  ロットはブレイブアドバンスの討伐部内では珍しい【魔法使い】として登録されている勇者で、優秀な戦力として扱われている。また、ギルド側から提示されているクエストの参加条件には「魔法使い限定」という文言が記載されているケースも多いため、現在ロットは会社の営業部が契約を結んできた大量のクエストで馬車馬の如く使い回されているのだった。 「よくやるよなぁ、ロットも。そりゃ大変だわ」 「本当っすよね。そもそもアイツが参加してた昨日のクエだって、本来なら夕方には完了してるはずの中型モンスター2体の討伐クエですよ?それが当日になって『実はエリアに同じモンスターがもう一体いたみたいで、ついでにそっちも』ってなって……」 「うわ、最悪じゃねぇかよ」 「当然アイテムも2体分しか持ってきてないわけですけど、”赤帽”に支給品配達させようにも手配が間に合わなかったってことで……。結局、薬草だ解毒薬だ何だって、全部現地採集してなんとかやりくりしたらしいですけど」  アイテムの最終クエストやダンジョンの探索クエストとは別に、魔物の討伐クエストはイレギュラーな事態が多い。いざクエストに向かって観れば、受注したクエスト内容と実際に闘うモンスターの種類が違う、そもそも依頼人が発注したモンスター情報に誤りがあった……。等々、さまざまな不測の事態が考えられる。 「大変だな。あいつ先々月に結婚したばっかだろ?家帰っておかないと嫁さんも大変だろうに。」 「まぁ、アイツの奥さんは俺も知ってますけど、いい子ですからね。理解はあると思いますよ」 「だからってなぁ、女ってのはよ、しっかりかまってやらないと後々大変なことになるんだぞぉ?」 「おぉ~~……。流石、”バツイチ先輩”の言うことは重いですね」 「うるせえよ」
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