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「いや、そん時はギルドマスターが『対大型モンスター決戦用砦運営委員』に言って席空けてたからさ、事務所にいた新人のハギーモ経由で伝えたけど」
「うわ、出た」
マッドが「ゲェ」という顔になる。
「あの……ハギーモって最近新卒採用で入って来た、あの若い兄ちゃんですよね?だったら不味いっすよ。アノ人、俺ら現場の人間が何か言っても、結構忘れてるじゃないですか」
話を聞いていたロットも、口をはさんだ。
「なんだよ、新卒組の幹部候補生だろ?アイツ。だったら、そういう所はしっかりしてるんじゃねぇのかよ」
エッジが嘆息していると、マッドがふざけた声色を出す。
「『あ~チェックしてませんでした~』」
「やめろ、アイツのモノマネすんの」
「『うわぁ~以後気を付けますぅ~』」
「……先輩、上手いっすね」
思わずロットが笑ってしまうが、マッドは「だって俺、何回も聴いてんだもん」と苛立ちを隠さない。
「だから俺、ギルドに要件伝える時は、ゼッタイにアイツは通さない。バイトの受付嬢に言う方がマシってレベル」
そう吐き捨てながらガチャガチャと音をたてて、マッドは支給された薬品の銘柄に目を通していく。
「つーか、ポーションも変更されてないじゃん。これに関してはマスターに直接話したんだけどなぁ……」
「なんかもう、『それが当たり前』って感じになって来てますよね」
「困るんだよなぁ、このままだと……」
それでも今更不平を並べてもしょうがない。各自鞄の中に、心もとない支給品を入れていく。
「というか冷静に考えれば、今支給品内容を管理してる課長が派閥的にシモハ専務の傘下だからなぁ~……。ホラ、アノ人とにかく経費カットすればいいと思ってる人じゃないですか。それを考えたら、ウチラの支給品が貧相になるのも納得っすよね」
中小規模の会社とはいえ、一応複数の人間がかかわっている共同体。それなりに派閥間の争いやいざこざはあり、それらで発生した面倒事の大半は現場の勇者たちが背負い込むことになる。
「ドライバーの話だと、ここらのエリアで 備品常設してないのウチだけらしいっすよ。他のベースキャンプには、どこの会社でも1.5倍くらいの品目が入ってるらしいですからね。うちだけ荷物が軽いから『乗ってるドラゴンが早く飛んでくれて助かる』って苦笑いしてましたよ」
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