1章 リストに載ってないモンスターが出ました

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「僕は元々、魔導高等学院で『雷電魔導技師』の1級資格取ってたんで、その資格を遣える職場に行きたいなと思いまして。それでここに流れて来たってだけですよ」 「けどよ、電気属性の魔導士で、しかも【雷電】系統だったら電気属性の『魔導書』の製本工場とか『魔導力発電所』とかで引く手数多だろ?何でワザワザ勇者に?」 「それが俺の習った頃って、まだ電気属性の魔導の規格がギリ統一されてなかった頃なんすよ。で、自分が覚えたやつはその辺の業界で使う規格基準に満たない回路組み込んでる魔法陣なんで、資格として採用される基準として認められてないんすよね」 「あ~そういうオチか」  魔法に使用されている魔法陣には、さまざまな回路が組み込まれている。 もしも適正な魔法陣とは構造が違う回路を使った魔法を使ってしまうと、他の魔法とのバランスが乱れて暴発、事故につながってしまう事案が多数報告されていた。結果として事故を防ぐために各業界で使える魔導の規格統一することが法的に義務付けられた。 「けど、魔導士系の勇者はまだツブシ効くだろ。俺なんて砲兵上がりだからよ。砲兵なんて一級どころか、特級の『砲兵技能検定』取得しても傭兵か、国軍で冷や飯食うのがオチだ」  元々他業種への転職に当たっては、ハードルが高いと言われがちの勇者業だが、中でもエッジの様に『砲兵』等の専門職に就いていた人間は特に働き口は絞られてしまう。  もしも専門職自体に高いニーズがあれば「勝組」と呼ばれるが、ビジネスにおける勝敗の基準は時々刻々と移り変わるものだ。  後輩のマッドはそんなシビアな話を聞いて腕を組む。 「時代っすねぇ。俺のオヤジの頃なんかは、砲兵は軍の花形だったって。親父も憧れてたらしいっすよ。結局、自分じゃ体力的にやっていけないって考えたみたいで、ボウガンの弾薬専門の製薬会社勤務ですけど」 「大正解じゃねぇかよ。もうポータブルのボウガンが進歩したせいで大砲が戦線から消えていったんだからよ」  技術の進歩に吊られて、雇用の風向きも変わっていく。 「で、前の職場で軍人として勤務を続けるために、こっちがこの年からボウガンの扱い勉強する羽目になったと思ったら、今度は魔法だ。俺が退職する間際も『四菱空軍』の新人はほぼほぼ火属性絡みの学部の大学出てるエリート学生ばっかだったぜ。確か『炎熱魔法』のやつらがスゲェ増えてた気がするぞ」
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