第2章 彼と歌

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 次の日もまたその次の日も私は彼の家に通った。文化祭前に入った振り替え休日の日に彼は美術館に行こうと彼は提案した。 「どちらかというと結菜も僕も遊園地みたいな騒がしいところは苦手だと思うから。」 彼はそこで話を切り、パンフレットを取り出した。 「その通りですけど、この美術館この町にあるじゃないですか。」 「なにか問題があるの?」 「私をいじめている人たちに会いたくないんです。」 彼は吹き出して笑った。 「大丈夫。今時の高校生は美術館なんて来ないよ。」 私は無言でうなずく。 「それじゃ楽しみにしてるよ。」 彼はそのまま自分の世界に入ってしまった。  私も自分の世界に入る。私は本当に最低だ。何もしていないのに幸せを手に入れている。私をいじめている彼らと何も違いはない。私は彼を傷つけてはいけないと言い訳する。それでいい。それが私だ。  
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